林 ゆり子さん
昭和43年生まれ
田んぼと柿と、家族のある暮らし
家庭と田畑を支える日々
私は松川町名子(なご)から35年前にここへお嫁に来ました。実家も農家でしたが、ほとんど手伝ったことがなかったので、この家に入ってから義父を手伝いながら農業を覚えていきました。4年前に亡くなった夫は勤めがありましたから、田んぼや畑はほとんど私が一人で世話をしてきました。アルバイトをすることもありますが、それも農業関係なので、農業一筋と言っていいかもしれません。
栽培しているのはお米と柿がメインで、ほかに梅、イチジク、ロマネスコなども作って豊丘村の道の駅に出しています。

米―有機栽培ならではの苦労
お米はコシヒカリを3反歩ほど。3月に1回春起こしして、4月の終わりに籾まきをして、時間をおかずにもう一度田起こしして代掻きをします。田植えは5月の終わりから6月に。手押し式の稲刈り機を使って、娘に手伝ってもらいながら植えています。長靴を泥にとられたりして二人で大騒ぎしながらやっています。
夏の間はひたすら田んぼの土手の草刈り。暑い盛りの仕事なので、一年の中で一番大変な作業ですね。うちでは学校給食のための有機米も作っているので、除草剤は使いません。田の中の雑草も、稲がまだ伸びないうちは草かきのような除草機を使って取っています。集めた雑草は柿の木の下に運んで肥料にしています。
秋は9月に稲刈り、10月に脱穀です。うちは今でも刈った稲を天日で乾かす「はざかけ」を続けています。田んぼが小さくて機械が入りにくいこともありますが、部奈では他にも何軒かはざかけをしている農家がありますよ。はざを組み立てる作業は息子も手伝ってくれます。
柿―品質の高い市田柿を目指して
柿は「市田柿」を1反歩ほど手がけています。1月下旬から2月にかけて剪定をして、7月の終わりから8月ごろに摘果。消毒はSS(スピードスプレーヤー)でこまめにやっています。10月から収穫が始まり、皮むきや吊るしの作業で忙しくなります。ビニールハウスの中に柿を吊るして、12月にはざ下ろし(取り込み)。その先の作業は家の中でやります。
家を建て替える前は土間で作業しましたが、今は座敷の中をブルーシートで覆って作業します。柿の表面に白い粉を吹かせる「柿もみ」のときに粉が飛ぶので、娘も嫌がって手伝ってくれません(笑)。12月は毎日座敷に入りっぱなし。もしお客さんがある場合は「こっちから行きます!」と。年内中に出荷するのを目指す感じです。
市田柿は、求められる品質レベルが年々上がっています。干す期間の長さやその間の毎日の温度、湿度管理が難しいですね。干しすぎると硬くシワの多い柿になるし、換気や燻蒸を怠るとカビたり発酵したりしやすくなります。講習会にも毎年参加し、試行錯誤しています。
納得のいく「ぽってり」とした良い柿ができると、やっぱり嬉しいものです。

水をめぐる助け合い―「横須羅井」と発電所
部奈は西日が長く当たるので、日当たりという面では農作物にとっていい土地だと思います。一方で、昔は水不足に悩まされていたそうで、部奈を潤している大堤の水源を全員で守る仕組みがあります。
大堤から1.5kmほど上流には、川から堤に水を引き込むための「横須羅井(よこすらい)」があります。その水が滞らないように、70軒以上の家が毎日1軒ずつ交代で掃除に行くんです。当番の家には古い木の札が回ってくるので、必要に応じて貯水池の砂を流したり、水路に溜まっている落ち葉を掻き出したりします。今は車で行けますが、昔の人は歩いていったわけですから本当に大変だったと思います。
また、今では大鹿村から生田発電所まで運ばれている発電用の水を、農地にも分けてもらっているので安定しています。大鹿村から運ばれてきた水の一部が、地中のパイプを通って分配されています。そういった地域の支え合いがあるから、農業が続けられているんだと感じます。



日々の楽しみ―松茸と仲間、そして初孫
部奈の景色で私が特に好きなのは、家のすぐそばの畑から見える中川村方面の眺めです。夏になると、中川村の花火が何箇所からも上がるのがちょうど全部見えるんですよ。
密かな楽しみは、10月の松茸採りです。昔から義父と一緒によく家の山に入っていたので、松茸が出るシロ(場所)は一通り分かっています。シーズンになったら何を置いても採りに行かなきゃって、夢にまで見るくらい(笑)。焼いたり、すき焼きにしたりして食べるのが最高ですね。
農作業が一段落する2月から3月にかけて、近所の女の人たち4人で日帰り旅行に行くのも楽しみにしています。私が運転して、諏訪湖や土岐のアウトレットなんかに行ったこともありました。
もうすぐ息子の方に初めての孫が生まれるので、今はなんだかソワソワしているんですよ。お嫁さんと孫もこの家に入って一緒に住む予定です。このあたりは車もそんなに通らないから外で遊べるし、子育てにはいい場所だと思いますね。


